目次
賃貸でトラブルが起きた時のため最低限覚える法律用語
「借家」とは
借家という言葉は単純に耳にすると一戸建て住宅のイメージが連想されます。
しかし家を借りる(賃貸する)うえで覚えておく場合の「借家」は1戸建住宅だけでなくアパート、賃貸マンション、さらには営業用の店舗や事務所の建物の賃貸も含まれます。
「借地借家法」とは
借家は建物を借りる場合の総称ですが、その建物を借りる時に借り手側である借主を保護する法律が借地借家法です。
借地借家法が適用されない賃貸借もある
借主を保護する法律である借地借家法ですが、適用される場合と適用されない場合があります。
適用される場合
居住用に有償で建物を借りる場合。
例:一戸建て住宅を借りる。アパートを借りる。住居用の賃貸マンションを借りる。
営業用に建物を有償で借りる場合
例:店舗、事務所、倉庫を借りる。
例外:上記の例のように店舗として借りる場合でも例外があります。
「ケース貸し」デパ地下の区画を使用しているような場合です。使用する内容で適用される場合もありますが例外としてあげます。
適用されない場合
居住用に無償で建物を借りる場合
例:アパートの1室を無償で借りる。一戸建てを無償で借りる。住居用の賃貸マンションを無償で借りる。
例外:金銭名目の支払いではなく「お礼」として払っている場合でも金額によっては「借家契約の対象」となる。
例外2:公営住宅を借りる場合は公営住宅法という特別な定めが適用されます。
営業用に無償で建物を借りる場合
例:店舗、事務所、倉庫を無償で借りる。
借地借家法の仕組み
民法と借地借家法の違い
建物を借りる契約についても民法に定められています。
(賃貸借)民法601条 賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方に約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
しかし民法で定められているのは「ある物」と広く物の貸し借りを定めています。
民法のみの規定ですと賃貸借の契約期間が満了した後の更新は双方の合意が必要になり、貸主が拒否すると契約が終了してしまいます。
これでは安心して家も借りれないですよね。
そこで建物を賃貸借する場合には借地借家法を適用することで、民法のような厳しい内容ではなく借主が保護される内容に特別な法律として制定されています。
借地借家法と区分所有法について
分譲マンションには借地借家法の他に区分所有法があります。賃貸アパートよりも細かく制定されていて迷惑行為があれば賃貸している部分の停止や賃貸借契約の解約などの処分もあり、マンション内の管理規約も分譲マンションを借りた人に適用があります。
例:マンションの規約にはバルコニーに布団を干す行為などが禁止されていて、景観の問題だけではなく、落下の危険防止も目的とされています。
借地借家法と公営住宅法について
公営住宅の賃借には公営住宅法という法律が適用され、違いとしては借家権の相続が認められないなどの違いが制定されています。
例:公営住宅に住んでいる親が亡くなり、その部屋を同居していない子供が住む場合は相続権が認められず住めない。ただし例外あり。
建物の賃貸借契約について知る
賃貸借契約と使用貸借契約
賃貸借契約は広く、貸主が借主から賃料を受け取り物を貸す契約をいいます。有償である点でタダで物を貸す契約である使用貸借契約とは異なります。
例:親族の家をタダで貸してもらう場合は使用貸借契約。
建物の賃貸借契約の効果
家主(大家)の権利と義務
権利は「要求できる事」義務は「従う事」
賃料を請求できる権利
大家は借主にたいして部屋を使用した対価として、賃料を請求できる権利が発生します。
賃料の支払いは原則として後払い
現実は翌月分の賃料を前月末日までに払うようにしているのが一般的ですが、特約により末日払いになっています。
例:家賃の支払いは毎月末日までに翌月分を振込みお願いします。などの契約文言。
建物の修繕義務
大家は貸している建物が壊れた場合には修繕する義務があります。賃貸借契約の締結の前後を問わず建物が破損した場合は修繕しないといけません。また、建物が天災で無くなってしまった場合は当然に賃貸借契約は終了し建物を再建築するように要求することはできません。
例:火災で契約前にアパートが滅失しても当然に契約がなくなり、建て替えを要求することはできない。
借家人(借主)の権利と義務
借主には借家権という権利が発生し、契約の目的である建物を使用できるようになります。その対価として賃料の支払い義務が発生します。しかし借家人は契約や賃借建物の性質によつて定まったようほうに従って使用しなければなりません。
例:部屋を汚損、損傷させ再三注意されたが同じ行為を続けた場合に契約解除を家主から請求される。
※詳しくは「賃貸借期間中のトラブルについて」の記事を読んでください。
一戸建ての賃貸借について
一戸建てを借りる場合は、その建物1棟の全体を借りることを言います。その建物の敷地についても建物を使用するために必要な範囲で通常の使用ができますが、通常の使用とは認められない使用もあるので追って説明いたします。
一戸建ての建物を借りる場合
一戸建てを借りる場合はアパートや賃貸マンションと違い上下左右の住人とのトラブルが発生することは気になりませんが、近隣住民に迷惑をかける行為をした場合には契約を解除される場合があります。
例:戸建の借家人(借主)が借家を自分の物だと主張し家主との信頼関係を著しく害した時。
※詳しくは「賃貸借期間中のトラブルについて」の記事を読んでください。
一戸建ての賃貸借と敷地利用の関係
建物は敷地があって当然に存在するものです。一戸建てを借りる場合は当然に建物の使用に必要な範囲で敷地を利用する使用権も含まれます。ただし、使用方法が通常の使用と認められるか通常の使用とは認められないかで使用権の有無が変わります。
通常の使用と認められる場合
例1:敷地に家主の承諾を得て物置や納屋を設置する場合。仮に承諾を得ていない場合でも小規模で撤去できる場合は問題ないと考えられます。
例2:庭の使用。小規模な家庭菜園や、自家用車の駐車場として使用する場合は通常の使用と認められる場合が多いです。
通常の使用と認められない場合
例1:敷地に家主の承諾なしに大規模で撤去が困難な物置や納屋などを設置した場合。
例2:敷地を駐車場として使用できる旨の特約がない場合で、敷地を駐車場として借主以外の他人が使用できるようにした場合。
例3:居住用の目的で借りた一戸建ての敷地内に営業用の店舗を設置した場合。作業場を設置した場合も通常の使用とは認められません。
アパート・マンションの賃貸借
一棟の建物を、構造上いくつかの独立した部分に区分し、区分した各部屋を借家人に貸す場合があります。一戸建てと違い壁や床、天井を隔て近隣と生活するので騒音トラブルなどが発生しやすいです。
アパート・マンションの違い
アパートと賃貸マンションの違いは正確に定まっているわけではありません。
アパートとは
1棟の建物で複数の部屋を賃貸の目的とするもののうち、比較的小規模で、構造が木造や軽量鉄骨造の場合に一般的にはアパートと呼ばれます。
マンションとは
比較的大規模なものが多く、構造は鉄骨・鉄筋・鉄筋コンクリート造の場合に一般的にはマンションと呼ばれます。
分譲マンションにおける区分所有法と管理規約
分譲マンションを借りる場合は、その管理や使用法律(区分所有法)に関して区分所有法と管理規約によって定まっています。分譲マンションの1室をそのマンションの部屋の大家(区分所有者)から賃借する場合には、賃借人も区分所有法と管理規約の適用を受け、これに違反した場合には賃貸借契約を解除される場合もあります。
例:分譲マンションの建て替え決議の効力は借家人には及ばない。ただし建て替え決議の成立だけでは契約解除の際の正当事由には該当せず借家人に立ち退きを求める場合は通常の契約解除等の手続きが必要。
定期借家権について
定期借家権とは、建物賃貸借の期間が満了した場合に更新が一切認められない借家権であり1年未満の賃貸借契約期間も認められる。
定期借家契約ができた理由
通常の賃貸借契約では契約期間満了後に、家主が更新したくない場合は借主の合意の元に契約を終了させるか正当な事由がない限り契約の終了はできません。
そのため、契約期間終了の定期借家が制定される以前は空き家を所有していても貸し出すことをためらったり、賃貸住宅を建築する場合でも短期で退去の可能性の高い単身者向けの回転効率のいいワンルームマンションばかりが建築されていました。
そこで、新規賃貸住宅供給の活性化と、ファミリー向けの大規模賃貸住宅供給の増加を目的として契約期間が来たら当然に終了し借家人の更新が一切認められない定期借家制度の新設が行われました。
※平成12年3月1日施工の改正借地借家法にる更新の認められない定期借地借家制度の新設
定期借家契約である旨の説明義務
定期借家契約は前段で説明した通り契約期間満了後の更新が一切認められないため家を借りる人に不測の損害を与える可能性があります。
防止するために定期借家契約を締結する場合には、契約書類を公正証書などの書面で締結しなければなりません。
※公正証書は法律の専門家である公証人が公証人法・民法などの法律に従って作成する公文書。
家主は契約を締結する際は書面をもって借家人に対し「契約の更新がなく期間満了によって賃貸借契約は終了する旨」を説明する義務があり、説明を行わずに契約を締結した場合には普通の賃貸借契約となります。
これは不動産会社が媒介、代理する場合も説明義務があり定期借家契約である旨の事前説明は省略できません。
定期借家契約の仕組み
定期借家契約を締結する場合と契約終了の際の仕組み。
契約を締結する際には公正証書等によって作成された書面をもって契約期間満了によって契約は終了する旨の説明を受け契約を締結する。
1年以上の契約期間を定めた場合の契約終了の通知
家主から契約満了の1年から6ヶ月前までに契約終了の通知が必要です。
通知がないまま終了期間がきた場合は、通知の後6ヶ月経過するまで契約は存続します。
1年未満の契約期間を定めた場合の契約終了の通知
定期借家契約は1年未満の期間を定めることも可能であり、1年未満の契約の場合は家主からの終了の通知は不要になります。
定期借家契約と普通借家契約の違い
定期借家契約と普通借家契約の違いは契約期間が終了した際に更新がないこと以外にも異なる部分があります。
契約締結方法
普通借家契約の場合 特に制限はなく、口頭での契約も締結できる。
定期借家契約の場合 契約締結前に、期間が満了により契約が終了する旨の説明が記載された公正証書等の書面で締結しなければならない。
※公正証書は例示であり書面であれば原則契約は可能。
契約期間の違い
普通借家契約の場合 1年以上であれば上限の制限はありません。※1年未満の期間を定めた場合は期間の定めのない契約となります。
定期借家契約の場合 制限はなく、1年未満の期間や上限についても無制限となります。
賃料増減の特約の効力
普通借家契約の場合 借賃の増減をしない旨の特約がある場合でも、公租公課や近隣の借賃の変動など一定の事情があれば、借家人からの減額請求は可能。
定期借家契約の場合 賃料増減の特約があればそれに従い、借地借家法の減額請求の規定は適用されない。改定に関する特約とは、固定資産税の増減割合に応じて増減するなど、客観的に借賃が決まるものをいいます。
中途解約の可否
普通借家契約の場合 中途解約に関する特約があればそれに従い、特約がない場合は家主と借主が合意しない限り中途解約はできない。
定期借家契約の場合 床面積200㎡未満の居住用建物(生活の本拠として使用する店舗兼居住用建物含む)の賃貸借の場合は、やむを得ない事情により、生活の本拠として使用できなくなった場合には、特約がなくても借家人から中途解約できる。
建物の使用借権について
他人のものをただで借りる契約のことを使用貸借契約と呼び、この使用貸借契約から発生する借主の権利を使用借権といいます。建物の使用貸借契約には借地借家法の適用はありません。
使用貸借契約に借地借家法の適用がない理由
使用貸借契約は他人のものをただで借りる権利ですが建物の大家の良心で家をタダで貸す場合には借地借家法を適用し借主を保護まですると、大家の良心を害することになりかねない為、使用貸借契約には借地借家契約の適用がないのです。
使用貸借契約に適用される法律
建物の使用貸借契約には借地借家法が適用されない事は先ほどお話しいたしました。使用貸借契約には一般法である民法が適用されます。
賃貸借契約との違い
使用貸借契約には民法が適用され借地借家法の適用はない旨を説明しましたが、使用貸借契約における通常の賃貸借契約との違いはどのように現れるのでしょうか。
存続期間と解約
民法では使用貸借契約の存続期間には特別の定めはありません。
使用期間を定めた場合 使用貸借契約を結ぶうえで返還時期を定めた場合は借主は定めた時期の到来で返還する義務を負います。
使用期間を定めない場合 使用貸借契約を結ぶうえで返還時期を定めない場合は借主は定めた使用目的を達成したときに返還する義務を負います。
使用期間も使用目的も定めない場合 家主はいつでも返還の請求をできます。
使用貸借の目的物が譲渡(家主が変わった場合)の対抗力
使用貸借の目的物(家)が別の大家に変わった場合は使用借権を主張することはできません。今の大家の厚意により使用貸借を結んでいるので次の大家には当然に主張はできないのです。
使用借権の相続 使用借権は借主が死亡した場合には相続されずその効力はなくなります。
建物の一時使用について
借地借家法は建物の賃貸借契約であっても、その使用が一時的な使用を目的とする場合には借地借家法の適用は一切ありません。
一時使用の場合には適用される法律
建物を一時使用する場合は借地借家法の適用はありません。その結果、民法の規定が適用され家主と借主に合意がない限り契約は期間満了により終了し更新は認められないこととなります。
一時使用にあたる主な利用目的
建物を借りる際の利用目的が、一時的な式典や博覧会、避暑や避寒などの臨時的に建物を使用する場合には借地借家法を用いて借主を保護する必要は薄いことが理由です。
一時使用にあたるか否かの判断
建物の賃貸借の場合に、一時使用にあたるか否かの判断を具体的な判例をもとに比較してみました。
一時使用となる場合
例1:貸主の学校卒業後、2年間の見習い期間を経て独立開業するまでの賃貸借。
例2:貸主が建物の具体的な建築計画を有しており、その計画が実施されるまでの賃貸借。
例3:家主が建物の空き家として売却するまでの間の賃貸借。
例4:家主が公務員で、転勤を終えて帰ってくるまでの賃貸借。
例5:建物の敷地が都市計画の対象となっており、立ち退き予定の時までの賃貸借。
一時使用とならない場合
例1:家主に建物の改築計画はあるが、その時期が明確に定まっていない場合の賃貸借。
例2:家主の建物利用計画が調査段階に過ぎず、実現可能性が低い場合。
例3:借家人が、建物の長期使用をできるように改造したことを家主が黙認していた場合。
例4:借家人が、家主の承諾を得て賃借建物に多額の投資をした場合。
例5:借家人が賃借している自己の貸家の明け渡しを受けるまでという約定の賃貸借。
判例は、一時使用の建物賃貸借であるか否かは、その期間の長短だけでなく、賃貸借の目的や動機、その他の諸事情から客観的に判断するとしています。
家主・借主が変更したとき
建物の賃貸借の場合に、売買の所有権のように賃借権を登記することはまずありません。建物の所有者が代わったときに借家人は新所有者に賃借権を主張することはできるのでしょうか。
建物賃借権と登記
登記とは 自分の権利を国の機関である法務局が管理を行うことで、誰のものであるかを国が証明してくれる制度のことです。
不動産売買では買い受けた物は自分の所有である旨を所有権として登記できます。賃借権も実は登記することはできます。しかし、賃借権の場合には不動産売買と違い借家人が登記しようとしても家主には登記に協力する義務はありませんので実際に建物賃貸借が登記されることは実務上ほとんどないです。
新所有者への対抗力 民法上は借りている不動産が譲渡された場合には「登記されていないと賃借権の主張はできない」としていますが、借地借家法では新所有者に主張できるとして借家人を保護しています。
新所有者から借家人への賃料請求 判例では建物の新所有者が借家人に家賃の支払いを請求するためには所有権移転登記が必要としています。
賃貸でトラブルが起きた時のため最低限覚える法律用語②へ
次回は原状回復についてのトラブル回避方法をお伝えいたします。
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